奈良の建築家 浅野勝義の家づくりBLOG

八ケ岳高原音楽堂

 
八ケ岳高原音楽堂
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八ヶ岳高原音楽堂::20世紀最大と称されるピアニスト・リヒテルの
「世界でも通用するような建物を」 と いう言葉を活かし、作曲家・武満 徹の
助言をもとに、室内楽の上演に理想的な音響を具現化。
とあります。

八ケ岳高原音楽堂
八ケ岳高原音楽堂

所在地は 長野県南佐久郡南牧村大字海の口
竣工は 1988年。
設計は吉村順三先生の作。

木・RC混構造 地上1階・地下1階
敷地面積 6,500.00m2
建築面積 1,167.42m2
延床面積 1,275.58m2
ホール面積 418m2(回廊含む)
最大収容人数 250名(ホール)

標高1500m。八ヶ岳連峰の南東斜面に建つ音楽堂で、六角形を組み合わせた
ような平面をしています。

ホールの外周を廻るコンクリートの柱は六角形で構成されていていて、
コンクリート打ち放し仕上げの型枠に杉板を型枠に使って打設したので
コンクリートの表面に杉の模様が優しく映ります。

もう、今から10年以上前になるでしょうか、
2007年の秋に吉村先生の設計された建物を見る事を目的に、2度目の
八ヶ岳高原ロッジに伺いました。(1度めは20代に事務所の社員旅行にて)

その際、スタッフの方に無理言って音楽堂を見せて欲しいとお願いしました
ところ、気持ちよく「翌日の朝であれば」と言う事で、次の日の朝食後
八ヶ岳高原音楽堂の見学をさせて頂くことが出来ました。

その節はありがとうございました。

宿泊させて頂いた 八ヶ岳高原ロッジ。

この大きな暖炉の前で出して頂いた椅子に座り、夜遅くまで夫婦で燃える火を
ずっと見ていたのを思い出します。

八ヶ岳高原ロッジ
2007.11 八ヶ岳高原ロッジにて

翌日、スタッフの方に連れられて音楽堂に伺いました。

八ケ岳高原音楽堂
八ケ岳高原音楽堂外観

まず、屋根のどっしりとした大きさが好いですね。
このバランスがカッコ良さを決めているのではないでしょうか。
正面から見ると、奈良の寺社に通じるものがあるように感じます。

外周部を走る六角形の柱

外周部を走る六角形の柱

1面に杉板5枚ほどを組み合わせた表面が6面で1本の柱を構成しています。
天井はカラマツでしょうか。

軒先は深く、とっても低く造られています。
軒樋はありません。

八ケ岳高原音楽堂
ピーラー横張の入口扉(レンズの歪が・・・)
八ケ岳高原音楽堂
ドアの取っ手

幅広のピーラー横張のデザインドアですね。
そうやって今見直すと、私の設計する玄関ドアもピーラーの縦張りもしくは
横張ですので、何かしら影響を受けていたのでしょうか。
ちょっと嬉しく思います。

床のタイルは平瓦風に見えるのですが、どうなのでしょう。

ホワイエです。

八ケ岳高原音楽堂

全ての照明を付けて頂いている訳ではありませんが、トップライトから落ちて
来る光がとても明るく、また、トップライト部分のみを白く仕上げていますので
相乗効果で明るくなっているのでしょう。

ホワイエと演者通路との仕切り

八ヶ岳高原音楽堂
右側下の廊下が演者専用通路になっています

楽屋からホールへ行く為の演者通路とホワイエの間には、両引きの3本建て具
が両サイドの壁に仕込まれています。 
写真ではオープンになっていますが、障子が壁に収納されています。
資料で見ますと、デザインは吉村障子ではなさそうです。

写真でも分かる通り、左側のホワイエと、右側の演者通路とは高低差を
付いています。 これはお互いの視線をずらす事で直接目が合わない様に、
またホワイエからの外部への視線を遮らない様に演者通路の床を下げる様
配慮されているのでしょうか。

八ヶ岳高原音楽堂
圧倒されるスケールのホール内部

分厚いドアの向こうには、大空間が広がっています。
中央の座席部分が一段下がり、そして上部への広がりが一段と高く映ります。

天井の高い大空間でありながら、窓の向こうの緑が目に入る様開口部を広く
採ったことで、空間の横の広がりも感じられます。

内部の壁はこれもカラマツでしょうか、板の間に吸音用のスリットを挟んで
音の反射を調整し、また面も対面しない様凹凸を付けた形状になっています。

八ヶ岳高原音楽堂
壁で音が相対しない様に角度が付けられています

音響面では,主に室内楽の演奏を想定して理論に基づく実験と、人の耳に
よる確認を繰り返しながら,小ホールとして理想的な残響時間1.6秒を実現
しました.とあります。

八ヶ岳高原音楽堂

席数は240席とありましたが、この当時はウェディング用に椅子が配置されて
いました。

イベント毎にステージを替え、椅子の配置も動かせるようにと持ち運び出来る
椅子をわざわざこの為にデザインしたのも有名な話。【たためる椅子】

八ヶ岳高原音楽堂
たためる椅子

ホールの上部には大型のペンダントが4基下がっており、
この照明のデザインも秀悦。

八ヶ岳高原音楽堂
天井から吊り下げられているペンダント照明

天井部分の中央には大きなトップライトがあり、この空間に必要十分な光を
取り込んでくれています。

八ヶ岳高原音楽堂
天井を見上げると・・・

今から思い返しても、吉村先生を追いかけていますねぇ。
13年経った今、再び見るとまた違う想いが湧いてくるのでしょう。
(見ている所は違うかもしれませんが)
当時見ていなかった部分も見てみたいと思いました。

今もなんか、こうやって見直すと
しみじみと感じるものがありますね。




浅野勝義/奈の町
2020.7

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