MIHO-MUSEUM(ミホ ミュージアム)

信楽焼きの器が好きで、住いの手洗いに如何ですかと住い手さんにも
お勧めしますが、私も好きですのでよく信楽へ器を買いに伺います。

信楽からすぐ近くにある美術館があります。
山の中にあるのですが、どんな美術館なのかと興味を持ち、2015年に
伺いました。

伺うまでこの美術館の概要は何も知らずに車で向かったのですが、
実際に見て驚きの建物でした。
美術にあまり関心の無い私ですが、建築の視線からご紹介させて
頂きたいと思います。

建築場所 滋賀県甲賀市信楽町田代桃谷300
森林法保安林区域 で県立自然公園内に建つ博物館
敷地面積 100万2000㎡
建築面積 9241㎡
地下1階 地上2階建て

設計  I.M.Pei Architect 紀萌館設計室
  フランス・ルーヴル美術館のガラスのピラミッドをデザイン他。
1997年(平成9年)11月に開館

MIHO-MUSEUM
正面ホール

信楽陶芸の森辺りから県道12号線を北へ15分もかかったでしょうか、
山の中を走ると、三叉路に《MIHO-MUSEUM⦆の看板が
ありました。

駐車場を出て階段を少し登ると、ロータリーを囲むように
レセプション棟があります。

MIHO-MUSEUM

入館料はここで支払い、美術館は? と聞くと、前の道を歩いてゆく
との事。
「ここじゃないんだ。」

MIHO-MUSEUM
正面のゲートの向こうにあるのだそう。

電気自動車で送迎もあると聞きましたが、まずは歩いてゆきます。
路盤も綺麗に整備されており、沿道の樹々もとても綺麗です。

ここから美術館のアプローチになっているのでしょう。
先にはトンネルがあり、ここを抜けると桃源郷へ行くという
コンセプトで造られたようです。

MIHO-MUSEUM
トンネルの内部にあるとてもこだわった仕上げと照明
MIHO-MUSEUM
トンネルを抜けるとつり橋があり、その先に見えてきました。
MIHO-MUSEUM
正面階段上に入母屋風の建物が見えます

この段階では屋根のデザインが入母屋風になっていて、少し和風
をイメージしたものかと思っていました。
この屋根が全てガラスで出来ていたことは後で知る事になります。

入り口に入った所。 曇りなのにとっても明るい。

シンプルで飾りが殆どなく、床・壁がベージュのライムストーンで
構成されています。

そして屋根。
パイプが全て三角形で組み合わされたフレームで出来ていて、
外部面は全てガラスで構成されています。

梁がスチールパイプで出来ているだけで、大空間であるにも関わらず
空間の内部に柱が存在しない構造です。

「(こんな大空間に柱が無い・・・」

MIHO-MUSEUM
エントランスホール右手を見る

手持ちの24mmにはこの空間が収まり切れなくて写真の構図に
悩んでしまう。
エントランス正面には松の木と緑の景色が目の前に広がるの
ですが、これも全景はフレームアウト。

右手側の通路と上部をフレームに入れて撮りましたが、下の方に
通路と階段、案内書が見えますから、そのスケールがイメージ出来
ますでしょうか。 この大空間。

中央部真ん中に抜けている部分がありますが、ここが建物正面から
見た際の入母屋部分になります。

もう一つ、私が気になった部分があります。
それはガラスの内側に取り付けられているベージュのラインです。

MIHO-MUSEUM
近づいてみると、木製のルーバーでした

近づいて見てみましたところ、木製に見えます。
柾目の木柄が見えますから。
不思議なことに全て美しい柾目の柄で、最初はプリントかと思いました。
何故ならこれだけ美しい柾目の格子を用意するにはとてつもない費用が
掛かります。
完成が97年だとすると、築20年以上な訳でルーバーが日焼けしていない
のも不思議。 やはりシートものか。

ルーバーの構成は、斜めに掛けている受け桟に、45度捻った格子が取り
付けられています。
取り付け形状は、いわゆる日本の寺社に使われる連子格子と同じ。
光の入り方も美しいはず。
こういう使い方もあるのかと感心させられます。

後で現像したものを拡大してみました(しつこい)

MIHO-MUSEUM
ルーバー部拡大

柾の木目が見えると思います。
でもどう考えてもこれだけの材料(四方柾の白太のみ)を本物では用意
できないし、焼けもしていないので、私はシート張りであろうと
結論付けました。

それにしても柾目は優しく映りますね。

MIHO-MUSEUM
2階展示室

美術館棟2階です。 窓の向こうには中庭を望むことが出来ます。

MIHO-MUSEUM
2階部。右手は中庭

ライムストーンの壁と床で構成されていますが、建物の明かりは
天井からの太陽光で十分すぎる明るさを確保しています。

上の写真にもありますが、ブラケット照明にも興味を持ちました。

MIHO-MUSEUM
ブラケット照明

壁に45度傾けた四角のデザインで凹をつくり、下半分に三角で
構成された器具を取り付けたもの。

本体でもガラス越しに発行するが、上部は凹部のみが鮮やかに
光る様に造られています。
暗くなるとこの様になります。

MIHO-MUSEUM
美しく光るブラケット

地階部分と1階エントランスを繋ぐ吹き抜け空間。
通路の奥が丁度入口はいった所のエントランスになります。

MIHO-MUSEUM
2階吹き抜け部

地階に植込みがありますが、これはファイカスの樹と言うらしく、
建築家のフェイ氏のこだわりだそう。

MIHO-MUSEUM
床のライムストーン

床も矩形の石を張るだけでなく、三角を意識した構成です。

MIHO-MUSEUM
地階ロータリー部

帰り口にあたる場所で、ここに電気自動車がレセプション棟までの
送迎に来てくれます。

天井はコンクリートのドーム天井で、上部に開いた矩形の穴からは
空を望むことが出来ます。
何でもこの空間の残響音は5秒だそうで、長い間響く音を愉しむ
事が出来るそうな。

天井だけでなく、床のピンコロ配置も美しい。

カフェで美味しいロールケーキを頂いた後、帰途につきました。
そうそう、帰りは電気自動車に乗ってレセプション棟まで乗せて
頂きました。

山の中に建つ美術館で、外部に面している部分は全体の20%しか
ないと書かれていましたが、あれだけガラス面が上部に露出して
いるにも拘らずほとんどが地中に埋まっていると聞いて、その
規模にも驚かされました。

信楽に行かれた際は、一度見に行かれることをお勧めします。

浅野勝義/奈の町

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