台風21号による三郷町擁壁崩落の考察

先日の台風21号は奈良に結構な爪痕を残しました。

三郷町での大和川一部氾濫と、近鉄線路沿いの住戸にある間地石崩落と
テレビでのニュースにビックリでしたね。
災害に会われた方は大変だったと思います。

特に擁壁(間地石積み)が崩落した現場の様子を見ると、擁壁自体が
滑り落ちた形で、後ろにある土も一緒に滑り落ち、建物の基礎下にある
鋼管杭が並びの3住戸とも露出していましたね。

 

nanomachi.co.ltd

毎日新聞より転写

 

あの場所は結構な高台になっていましたが、建物の下に杭を打設しないと
いけなかったことを考えると、かなり地盤が軟弱であったと考えられます。
高台にあったにもかかわらずです。

一般的に土地が高台にある場合、地山である可能性が高いと思うのですが、
建売で杭工事が必要だと言う事は、現地は盛り土をされた可能性があると
も考えられます。 でなければほぼ直接基礎で対応可能ですから。

そう考えてみて、ネットで1970年代の現地の航空写真を見てみました。

この辺りは以前は小山と言いますか、小さな森になっているのが分かりました。
この森は北側にある少し離れた大きな森と以前繋がっていたのかもしれません。

小高い森であったところに近鉄電車が線路の為に削ってしまったという事
なのでしょうか。 でも小山であれば地盤はしっかりしており、杭も必要ない
と思うのです。

もしかしたらこの小山の土質は、真砂土で出来ているのかもしれません。
地表に近い真砂土なら納得が出来そうです。

確かに土砂災害の土質は、真砂土が多いですからね。
でしたら地耐力が無いのも、見えていた土が赤いのも納得できそうです。

真砂土はその特徴から、今回の多量の雨を吸い込み表層部の砂が擁壁を
押し出してしまったのではないかと考えられます。

いずれにしても今回の住宅ですが、杭工事をしていたため家自体は線路側へ
滑り落ちずに建っていたくれたのは幸いしました。
もしこの杭が無ければ、擁壁と共に家ごと滑り落ちたかもしれません。

 

住いの土地探しをお手伝いする際、高台の土地は見晴らしがよく、
住まい手の希望条件として聞かせて頂きます。

しかし、高台と言う事は大きな高低差を持つ段差が存在し、今回のような
大雨などで多量の雨水が地面に溜まる事で擁壁ごと崩落する危険も一緒に
ある可能性もあると知っていてほしいと思います。

設計する方も今回のような杭工事などで対応するものの、現実的に不可抗力
という範囲でもあると言えるでしょう。

河川の氾濫もそうですが、土地を購入するときはこういった地盤や地形の事を
しっかり理解したうえで、探すのも必要なのでしょうね。

しかし、過度に怖がるのは違うと思います。
自分自身で簡単に判断せず、信頼できる専門家に相談するのも大切だと
思います。

 

浅野勝義/奈の町

 

 

 

 

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