私の一番尊敬しています建築家は、住宅建築で有名な吉村順三先生です。
吉村順三作品を旅行しながら見て回るのが私の趣味。
最近のことですが、
先日、天橋立温泉にあります文殊荘さんへ伺ってきました。
文殊荘さんと吉村先生の関わりは、当時(S34)増築工事を終えた俵屋さんに
当時のご主人が泊まられた際、設計されていたのが吉村先生であることを知り、
当主が新たに新館をお願いする建築家はこの方しかないと決め、東京の事務所へ
自ら依頼に伺ったという逸話があります。
文殊荘さんの設計図は、吉村先生の設計図資料で何度も見ていたので美しい
デザインの建物であることは知っていました。
是非、私も自分の目で見てみたいと切望していましたところ、今回やっと
行く機会が出来ましたのでいそいそと出かけることとなりました。
奈良から高速で2時間半ほどで辿りつく場所にある天橋立は、この季節雪に
覆われていました。
たまたま、この日は雪がやんだ谷間の日だったようで、現地までは道路の
制限など受けることなく文殊荘のエントランスまで車で付けることが出来ました。
外観は和風の立格子がデザインされた建物でしたが、一歩中へ入るとそこは
とっても明るくて落ち着ける空間でした。
大きな吹き抜けのある大空間・・・ではないのですが、この天井高さが
良いのです。
奥に映っている雪化粧がとっても美しい。
ホールの横には暖炉があり、火が燃えていました。
この暖炉のデザインもいい。
この前にあるソファに座って動けない・・・
受け付け(チェックイン)もここでさせて頂きました。(笑)
チェックインを済ませ、心待ちの部屋へと向かいます。
長い廊下を右に左に折れて進んでゆきます。
一般のホテルなら、エレベーターを降りてどちらかの廊下を一直線に〇番目、
なんて配置ですが、ここはこれから行くべき部屋がどこにあるのか分からなくて
それがまたワクワクさせてくれるのですね。
考えられています。
この廊下、チョッとみて違和感が感じられると思いませんか?
そうです。
廊下が畳敷きになっています。
この感じ、とっても良いです。
そして低い天井。
廊下が長く見せるための効果にもなっていますね。
壁や脚元ある和紙の照明もこの雰囲気に合っています。
何度か折れ曲がりながら部屋の近くへやってきました。
建物は同じ間取りが1階、2階と重なっていますので、入口ドアの近くには
2階へ上がる階段があります。
ちなみにこの階段、やはり一般の階段とは異なります。
よく見てみると、段板は畳で出来ています。
段板が畳と言うのはとても珍しいのではないでしょうか
では、客室へ入りたいと思います。
入ろとすぐにゆったりとした2脚のチェアがあります。
ここに座ると、正面に和室の床の間が見えるように配置されています。
床はカーペットなんですね。
自宅もカーペットですのでなんかとっても落ち着きます。
中に入り、スタッフの方が出てしまうとノートとスケール、そしてシャープペンを
取り出して、あちこちと寸法を取りだしノートに書き始めます。
建具の取り合いや仕舞の寸法、各場所の高さや組み合わせなど、とっても参考に
なりますので大変です。
ワクワクしてしまいます。
ここの外部建具ですが、いつもの配置とは順番がちょっと変わっています。
内側から障子、雨戸、ガラス戸、網戸の順になっています。
雨戸が一番内側にあるのですね。
実はこれもちゃんと理由があるようですよ。
建物の中やお部屋の見どころはいっぱいありますが、興味のある方はご自身で
見て頂けるとさらに楽しめます。(書きすぎると愉しさが半減しますので)
お風呂なんかもとっても楽しいですよ。
最後に吉村先生の時代には無かった場所ですが、この長い廊下の途中に
読書コーナーや絵本の部屋などがあるのです。
事前にホームページで見つけていましたので、実際に見てきました。
この窓からの景色、
とっても良いでしょう!
天井の低さ。
これ、とっても大好きですね。
こういうの私好きです。
内障子もありますね~。
雪景色も良いですね。
吉村先生の時代から少しずつ改装を重ねて、綺麗なレストランやバーなども
あります。
それでも、設計デザインは統一されていて美しく構成されているのに
感動いたしました。
浅野勝義/奈の町
2019.12加筆