ハザードマップで浸水50cm迄の地域で出来る家の建て方をご紹介。

ハザードマップで浸水50cm迄の地域で出来る家の建て方をご紹介。

広陵町ハザードマップより一部掲載

広陵町ハザードマップ

ハザードマップで浸水深さが50cm迄の地域では、どんな家を建てれば良いのでしょうか?

洪水ハザードマップには、河川等が氾濫した場合にその影響のある浸水区域を、自治体(市町村)毎にハザードマップにて一般公開しています。

このハザードマップに関係して、土地を探してられる方からのご質問です。

「土地を探していたところ、良い物件を見つけたのですが、その場所をハザードマップで調べると、50㎝までの浸水区域に入っていました。
この場合、浸水のリスクを考えると買わない選択か、買うならどんな建物の建て方をすればよいのかを教えて欲しい。」

こういった質問は、以前には殆どなかったことで、ハザードマップが一般に知られるようになって出てきた質問ですね。

購入を検討しようとする土地が、浸水区域に入っている。
その事が心配になって迷ってられる方は、結構いるのではないでしょうか。

今回はそういったご質問に対してお話ししてみたいと思います。

ハザードマップで浸水50cm迄の地域で出来る、家の建て方をご紹介。

浸水深さには何段階かの指標が示されていて、色分けされています。
0~0.3m、0.3m~0.5m(0.5m未満の表示を含む) 床下が浸水
0.5m~3.0m未満    1階床上が浸水
3.0m~5.0m未満    2階以上が浸水
5.0m以上       2階屋根以上が水没

ハザードマップで浸水50cm迄の地域で出来る家の建て方をご紹介。

広陵町ハザードマップより掲載。 0.5~3.0mの範囲が大き過ぎます。1.0mとか、1.5m位で分けてほしい…

想定される浸水に対しての対応策としては

1.地盤を上げる
2.建物を嵩上げする
3.建物に止水対策する

等が考えられます。

1.の地盤を上げる

擁壁で地盤を嵩上げ1m

敷地を擁壁で隣地より1M嵩上げしています

擁壁等で浸水高さまで地盤を上げて浸水に対処します。

2.建物を嵩上げする

建物を嵩上げする

計画地盤より40㎝高く基礎を打設しています

基礎コンクリート部の高さを浸水高さより高く造り対処する方法です。また、1階をコンクリート造で車庫にしてその上に2階建ての木造を載せるという構法(混構造)もあります。
その他、鉄骨造などで3階建てにして1階が浸水してもリフォーム可能なように水廻りを配置して上階に居住するといった対処が考えられます。

今回は、浸水高さが50㎝迄という区域ですので、一番お勧めなのは地盤を必要高さまで上げる(盛り土する)のをお勧めします。

浸水で一番困るのは、基礎の中に水が入り込む事です。一度床下に入ると排出がとても手間になりますので、床下へ入る穴(床下換気口)から地盤までの高さを50㎝以上にする必要があります。 一般に建物のGLから換気口までは25㎝程度ですから、建物地盤の嵩上げは30㎝以上あれば良い事になります。
奈の町で設計している住いの基礎高さは、基礎断熱ですから換気口は無く、建物地盤面から45㎝までコンクリートの立ち上がりがあります。 ですので地盤面を10㎝上げるだけで50㎝の浸水を回避できます。

地盤を上げるデメリットもあります。

○地盤を上げる分、1階までの高さが出来るので毎日の昇り降りが不便。
○玄関までのスロープは敷地の広さによって設置しにくくなる。
○地盤を上げる為の費用が掛かる。
○盛り土になるので地盤が軟弱で、地盤改良が必要。

他に止水板の対処がありますが、台風等の一時対策としても止水板による浸水対策は効果的です。 各社から様々なタイプが発売されていますが、基礎に換気口のある家はそこから浸水するので注意が必要です。
この対策は、中古住宅に対しての止水としてお勧めできます。

何れにしても、その対策費で建築費は少し割高になります。
それを含めて購入を決定して下さい。

浸水50㎝なら、低コストで対処は可能です。

奈良県の盆地はその中央を南北に何本もの河川があり、その河川が天井側である事で、河川のある地域では浸水対象外区域を探すと、その地域がとても限定されてしまいます。

特に駅に近い場所は土地の高度も低く、河川も近い訳です。 そもそも電車の線路や駅は地盤の低い部分に敷かれる訳ですし、駅近になるほどリスクは高い事が多いです。

はじめから交通の便や利便性を外した浸水対象外区域を求めるか、ある程度の利便性を重視してその対策が採れる地域で探すか、希望場所を検索する場合はその事を不動産業者へ伝える必要があります。

今回の浸水深さが50㎝未満の地域でしたら、その対策法として奈の町でも地盤を少し盛り土して回避する計画をしています。

30㎝も盛り土すれば、ほぼ回避可能ですし、費用もそう掛かりません。
また、敷地全体を盛り土するのではなく、家の周辺部分のみを盛り土するだけでも良いのです。 この程度の盛り土ならコンクリートブロックでも土留めが可能です。 基礎の底板高さも上がりますから基礎の掘削も少なくてお安くなる分、盛土量が増えてもかなり相殺できるでしょう。 コンクリートブロックの費用も外構工事に含めて一体で計画すると良いでしょう。

注意点としては、エコキュート等の基礎は建物基礎と同時に打設する事と、エアコンの屋外機は盛り土した部分の上に設置する事です。
浸水した場合、設備類が転倒したり冠水すれば使えなくなってしまいますから。

ただし既に建っている中古住宅や、古民家の様な床下が抜けている住宅を購入する場合は難しいと思います。ヒョイと持ち上げて盛り土をしたり基礎の増し打ちが出来る訳でもありませんから。対策としては、出入り口や家の周りに止水板などを立てる事で、浸水を止める方法が考えられます。
いずれにしても中古住宅の対策はなかなか難しいのではないでしょうか。

まとめ

ハザードマップで浸水対象区域に指定された土地を購入する際は、浸水の深さを見て建築の方法を選択する必要があります。浸水深さが5mなんて高い区域は、対処しきれないものもあります。その場合ははじめから避難をすると理解して購入しましょう。

玄関まで緩いスロープで嵩上げ

さて、今回のご質問にありました、
浸水深さが50㎝未満の区域ですが、対処はそう難しくありません。
一般住宅であれば建物周りを30㎝程度(基礎断熱なら10㎝)の盛り土で回避可能です。

現地が気に入っているのであれば、建物周りの地盤の嵩上げを行うことを前提に施工会社へ伝えてください。
建物の周辺のみでしたら、追加費用もそう掛からないと思います。
質問にありました土地の購入に関してのお答えは、地盤の嵩上げをしておけば安心して購入可能ですよ。

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