[耐震補強]壁の耐力面材と外壁の補修

床が下がっていたので根太を外して、大引きの高さ調整からやり直しです

現場から。

前回、フローリングを外し、根太が見えている状態でした。
床板を取り外した根太の高さを測ると、高低差が20mm近く下がっている場所があることが分かりました。

このまま上から下地とフローリングを張ることができないと判断し、一旦、根太を撤去し、大引きの高さ調整を行ってから新たに根太を設置する事になりました。

写真では大引がすでに敷かれていますが、実際は大引も一旦外して土台のみとし、束を以前の木製から鋼製へと変更して、高さを調整した上で、新たに大引きを遣り替えています。
木製の束が金属製に替わっているのが分かるでしょうか。

これで床の高低差は全てなくなりました。
なお、大引きの高さを調整してから根太を敷き、断熱材を充填する事にしています。

断熱材: 床下24k/80mmグラスウール

床下の断熱材はグラスウール24K厚80mm(断熱等級4)で行います 。

グラスウール24k/80mm合板下地に敷き込み

グラスウールを充填ののち、床下地の合板厚12、その上にフローリング張りとなります。

今回もいつもと同様に吉野檜のフローリングになります。

床下地を敷き込んだところ。現段階では仮置き。この後、等間隔で釘打ちを行い、フローリング張りとなります
原寸図の施工図を確認する

また、打ち合わせは、現場管理者が作成した原寸図で部分詳細と収まりを確認します。

各場所毎に原寸図を書いて、この図面を基に大工が取り付けや加工を行うために作成したものです。
この図面は北面の大開口部周りの詳細です。 
断面も、平面も原寸(1:1)で起こしていますので、ここで決められたものが、そのまま材料の寸法として確定して
発注されます。

各物件毎に毎回結構な枚数を作成していてくれ、現場監理時にその部分と全体を照らし合わせながら問題点があればその部分を打ち合わせします。
内部や外部の仕舞いの打ち合わせは、全て現地を見てこの図面で確認または修正します。

さて、テーマにあります 壁の耐震補強について今回くわしく説明します。

よく「耐震補強済」と書かれている中古住宅がありますが、耐震補強の壁補強についてお話します。
耐震補強は、金物補強と耐力壁の二つがありますこの片方だけでは不足です。
以下にあるような工事がされたのかも確認する必要があります。

金物補強は前回書きました筋交いの上下両端部が外れない為の金物の取りつけと、土台と柱、柱と梁が地震の際に外れないように、接合部分1ヶ所ずつ計算による指定金物で留める必要があります。
必ず指定柱の上下で取り付ける金物が決められています。

次に壁の補強になりますが、柱と土台、梁で構成する四角のフレームが変形しないように壁面で支える形の面材が、耐力面材と言われるものです。 4面共必要寸法をフレーム材に被せて指定釘で指定ピッチ以内で止める必要があります。
図面で言うと、下の右側になります。

左が既存部分(一般的なもの)、右が耐力面材を取り付ける場合

耐力壁の補強部分の仕舞(取り付け)に関しては、耐力壁を土台と柱、そして梁の4面に取り付けてから根太受けを土台の横に留め、その後床下地を貼り込みます。(床張りが後になる)

上にある図で説明しますと、左側は一般的な床と壁、壁と天井の取り合いを示します。
土台と大引きの間に根太を敷き、その上にフローリングを敷いています。 この時、注意して頂きたいのは、壁の範囲です。 壁は床板から天井までしかなく、留まっているのは、柱と間柱だけですから地震などに対抗する耐力はありません。

次に右側の図です。壁で濃く書かれているのが耐力面材と言われるボードで、一般には構造用合板が使われます。
今回は、柱間が950mmですので、1mx2.4mのメーカー耐力面材を使いました。

耐力面材:ノダ ハイベストウッド

耐力面材は耐震性を上げる上でとても大切で、必ず4方を木軸(土台、左右の柱、梁)に取り付ける必要があります。
一般的に根太が土台の上に乗っている状態ですから、下部を土台に留め流には、根太を切らないと耐力壁を4面張ることができません。

床と壁の取り合い部を見るときちんと壁の方が床より先行しているのが分かります
正面のパネルは、下は土台に、継ぎ手は柱に、上部は梁に4面留められています

「耐震補強済み」とうたわれている改修済み中古物件では、この辺りがかなりあやふやな改修をされていることが多いのではないでしょうか。そこまで工事をするのは現実的に考えてお金がかかります。
なぜなら耐震補強工事で壁に耐力面材を行うには、1箇所とか2箇所のみ行うようなことはなく、部屋全体や壁1面で行う必要があるからです。

根太形状に合わせて切り欠いたり(これも耐力不足です)、土台に補足材を取り付けたり出来なくはないですが、その加工の方が相当面倒だとも思いますが。

壁に取り付ける耐力面材による耐震補強工事は、ある意味効果が大きいですが、加工自体は結構面倒です。床や天井を一部めくり、撤去する必要がありますし、撤去した部分の補修も入りますから、お金もかかりますしね。
こんな状態になるまで改修されたのかも確認するといいですね。

次は外部面、外壁に入ったクラックと浴室のボイラー周りです。

既存の外壁。窓の右下から下へ大きなクラックが入っています

外壁を見ると、窓の下から綺麗に縦にクラックがあるのがわかります。

クラック部分の拡大写真。クラック部分で塗装が分離しに凹凸ができています

この場所は浴室の外壁ですから心配になります。
また、この場所は窓の下なので柱のある部分ではありませんが気になります。

また、隣にあるドアですが、これは勝手口ではなく浴室のお湯を給湯するために、このドア内に灯油のボイラーを設置して、この中でボイラーを焚いてお湯を沸かしています。

室内で灯油を燃焼するために換気口までドアの上についているのですが、危ないですし、空気も汚れますので、この屋内で燃焼するのを止めるべく給湯方法を変更します。 
方法はガス給湯器からの給湯に変更するだけです。

しかし、屋内(ドアを閉めた室内)でボイラーを燃焼し、灯油タンクもその横に置いておくなんて、屋外であるならまだどうかと思いますが。 燃焼した空気が簡単な室内ドア一枚で内部空間と繋がっているのです。

浴室横にあるボイラー室。出入り口横にあるのが給湯用のボイラーで、手前が灯油タンク

電気温水器なら分かりますが、これは即撤去です。
もちろん、灯油の出し入れのために使われていますこのドアも閉鎖します。
このドア、ガラリになっているために空気の出入りが出来るわけですが、寒さのためか内側から防風シートが貼られています。これでは全く意味をなしませんよね。
こんな危ない設備は撤去です。

次は外壁です。

このボイラー部分を出た先の外壁を見ると、1.0間(約2m)の範囲で外壁の色が変わっているのが分かります。
写真で見てもわかるとおり少し色が薄いです。
これは以前に吹付補修を行なった部分であることを示しています。

そしてこの範囲は浴室部分ですから、中で何があったのか気になります。
いずれにしても離れた部分からガス給湯器によるお湯をここまで配管し、浴室へ給湯接続するために配管を考える必要がありますので、ひとまず外壁を撤去して、内部の傷み度合いを確認します。

外壁部分を撤去してみました

取り外すと、窓の上下で下部のコンクリート立ち上げ部分と、上部の外壁下地が切り取られ、ここを埋めるべく木下地でラスカットを貼り、モルタル処理されているのが分かりました。
この繋ぎ部分の処理が悪く、外壁にクラックが発生していたことになります。

壁の内部にはクラックからの水の侵入は見当たらず(下部に小さなサビが見えますが問題はなさそうです)、気になる範囲を見る限り、下地の劣化も特に確認できませんでした。 隣にあるボイラー室への侵入のためのドアは、不要なので撤去し、外壁として埋めてしまいます。
当然内部から基礎と土台、耐震補強と断熱材を充填します。

話は浴室のこのモルタル補修部分に戻りますが、もし以前の浴室窓であったと考えた場合、えらい大きな窓であったと考えられます。
横に見えるで入り口と同じくらいですから勝手口サイズの窓(それも縦長)で、庭を見る窓というより、道路から見える位置にあるのは何故なのか・・・しかも、この開口はコンクリート立ち上がり前にあったものですから、この建物が建てられた当時に造られたものです。

それはさて置き、この繋ぎの部分の処理をきちんと処理して、今後クラックを発生しないように処理し、外壁をめくった部分の範囲は全て外壁の色に合わせて吹付を行います。
室内側も給湯配管のために調べてみて分かったことは、浴室をぐるりと囲むコンクリート立ち上げが1mほどあり、点検口が無いので床下を這ってきた給湯管を浴室内に送り込めませんし、人が床下へ入って接続できません。

最終的に洗面所の壁を一部捲り、コンクリートの立ち上がり部分にコア抜きを行い、そこからユニットバスの配管部に接続する方法を取りました。
浴室周りに立ち上げを行う場合、配管も含めて浴槽面に点検口(人通口)を作っておくのは必要です。
漏水しても、配管遣り替えにしてもこれでは手も足も出せませんので。

次回は、フローリング周りの話の予定です。

浅野勝義/奈の町

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