60代になって街で暮らす家
地盤改良(杭工事)が済むと、基礎を造ることになります。
建物のベース配筋(基礎の底板部分の配筋)は、
D13@200(13mmの鉄筋を20cmピッチで組む事を言います)で、
杭頭の位置から1Mの範囲は、杭の打ち抜き防止のために補強として
200mmピッチの鉄筋間にD10の鉄筋を入れることになっています。
では全体を見てみましょう。
全景1
奥へ細長い建物であることが分かると思いますね。
この建物の特徴として、細長い建物で且つ北側のブロックが2階建て、
南側の建物が平屋建てとなっているので、構造上建物の偏心率が
大きすぎることから計算方法を変えました。
建物を2棟に分けて、平屋の南棟と2階建てで別々に構造計算をしています。
中央辺りがその継ぎ目になります。
2本のホールダウンが建っている間が空いているのが分かるでしょうか?
ここで建物を分離しているのです。
分離する事の利点は、地震時に平家部分と2階建て部分が別々に
振動するので倒壊しにくい建物になります。
他にはホールダウンですね。
ホールダウン金物の下部は、ベースの鉄筋に引っ掛けています。
全景2
中央部に入って撮ったものです。
2棟の継ぎ目部分が分かりますでしょうか。
また、
ベースの鉄筋についてです。
周辺部以外はベースの鉄筋が大変細かいてのが分かりますでしょぅか?
ピッチは10CMになっているので、実際、みっちりです。
この段階で、立ち上がり部分の鉄筋径の検査もします。
鉄筋の径は1-D13から3-D16まで、計算で決められています。
立ち上がりの鉄筋は、上部でフック(カギ型に曲げる)が必要です。
基礎のブロックとブロックの間を点検する為に、開口部を造ります。
これが無いと隣のブロックへ移れないので、ブロック毎に点検口が必要になるのです。
上の写真はその開口部です。
地中梁をカットするので、そのままでは弱くなります。
そこを補強する為に開口補強に鉄筋を入れます。これを開口補強筋といいます。
上から斜めに掛かり、開口の下を通り斜めに上がってゆく鉄筋がそれです。
鉄筋径は特に太く、16mmを使います。
ちなみに開口巾は600ミリ、ベースの鉄筋は7ブロックありますね。
ピッチが100mmというのは細かいですよ。
(御近所でベースの配筋を見られたら是非比べてください)
この後、ベースのコンクリートが打設されました。
これから打設するコンクリートについて少々。
基礎のコンクリート強度については打設する時期によって温度補正しています。
奈の町での設計基準強度は、24N/mm3を基本とし、季節(日付)により温度補正を
+3N、+6Nにする事としています。
冬場は硬化が遅くなりますので温度補正を増やします。
なを、水セメント比は50%に指定しています。
また、ベース下の捨てコンクリート下には、防湿シート(地面の下から湿気が上がる
のを止める為)をシートの重ねを取る事はもちろんの事、縦横の2重に敷き込みます。
1重でダメな理由は、配筋時に引っ掛けたりずれたりして口が開いてしまうことが
よくあります。 これでは床下からの湿気は防止できません。
それを防止するため2重に敷き込むのです。
さて、ベースコンクリートを打設後、立ち上がりの型枠を組み立てることになります。
基礎断熱仕様ですので、既に型枠の一部として立ち上がり部分の断熱材が
一緒に取り付けられていますね。
そして毎回、必ず確認しています ”かぶり” ですが、
しっかりと全方向で確保されています。
左手が型枠の外部側です。
綺麗に真っ直ぐ伸びているのが一目で分かります。
外部面立ち上がりの “かぶり” の寸法は建築基準法で40mm以上と決められています。
しかし奈の町では基礎の巾を180mmにして,必ず60mm以上にしてもらっています。
この写真は70mm以上ありますね。
“かぶり”の分かり易い写真があります。
写真の下部に丸いリングが見えますでしょうか。
このリングはスペーサーと言い、鉄筋にこれを引っ掛けることでかぶりが取れる
用になる小物です。
私が一つだけ現場で指摘したことでなのすが、本来スペーサーの取り付け位置は、
一番外部にある鉄筋につけて欲しいと言いました。
この場合は、横筋に取り付けていました。
本来、外側は縦筋ですのでそれを指摘したのですが、、、、
実はこのスペーサー、90mmタイプで、このスペーサーの両端で180mmが確保
されていることが確認できます。(立ち上がりの幅は180mmですから)
実際の”かぶり”は、90mm-(maxD16/2)-D10=72mm以上確保されています。
とっても余裕がありましたね。
職人さん、失礼しました。
基礎のT字部分です。
先ほど書きました上部にある鉄筋を止める為のフックが分かりますでしょうか?
いつもはこのフックを45度ひねり、かぶりをとり易い加工をしてくれています。
まあ、これも全然問題ないです。
中央部にホールダウン、その右手と上手にアンカーボルトが見えます。
ホールダウンの下部はベースのコンクリートに埋まっています。
また、アンカーボルトは沈下を止める為にしっかりと番線で固定しています。
昔、実際にあったのですが、田植え式(コンクリートが固まりつつあるところで
アンカーボルトを直に植え込む方法)は絶対ダメですヨ。
写真の上部にはガス管引き込みのためのスリーブが見えますね。
50mmを越える場合は、スリーブ補強も必要です。
型枠の存置期間について
最後にコンクリートの打設後、型枠を取り外すまでの期間を存置期間といいます。
原則、打設してすぐに型枠を取り外すのは、絶対ダメです。
型枠の最小存置期間は、存置期間中の平均気温で決まります。
普通ポルトランドセメントの場合、
気温が15℃の場合は3日以上、 5℃以上は5日以上、0℃以上は8日以上です。
なを、打設当日はこの数字にカウントしません。
長くなりましたね。
次回は上棟になります。
浅野勝義/奈の町