建築家+住宅コンサルタント[一級建築士•宅建士•2級FP技能士]の浅野勝義が、住宅設計の知識や経験から住宅のお悩み相談承ります。

美邸の改修_良質な民家のリノベーション[雨漏り編]

WRITER
 
この記事を書いている人 - WRITER -
詳しいプロフィールはこちら

 

 

外壁が真壁造りの美邸で雨漏り対策

 

2階部分が縁側分後退している下屋部分の雨漏り防止

和風建築で一番の悩みどころは、ズバリ”雨漏り”です。

その原因は、外壁が真壁工法であるからです。

悩ましい言い方をしてしまいました。
真壁が悪いという話ではなく、真壁工法の雨仕舞が難しいと
いう説明が正解かも知れません。

真壁工法というのは、外部に柱や梁が露出している構造ですね。
柱梁のフレーム内に壁が取りついています。

昨今の住宅建物は、外壁をぐるりと仕上げ材で囲ってしまう工法が多く、
更に1階2階の外壁に段差のない家が多くなりました。
その為、外壁からの水漏れはとても少なくなりました。

真壁構造ではそう言う訳にも行きません。
何故ならば、柱梁のフレーム内空間を土壁で埋めているからです。

構造上、どうしても土壁部分と柱部分には隙間が出てしまいます。
その理由は振動や乾燥などが考えられます。

古い家に行くと、柱と壁の隙間から外が見えたりするんですよね。
内部を解体するととても良く分かります。
隙間から明かりのスリットがいっぱい出てきますから。

横殴りの雨が降ると、2階の外壁に当たった雨は、壁を伝ってのし瓦に落ちます。

その段階で水処理をしていないと、雨漏りが起こります。
特に柱の根元は水処理が難しいです。

柱の根元にある漆喰と瓦を取り外したところ

水切り部の拡大。やはり柱と壁の間は隙間があります。

写真は、雨漏りの確認の為、のし部分を取り外した状態です。

壁を伝った雨は、漆喰の水返しを下がり、のし瓦を伝い、下屋根へと流れます。

この物件はとても手を入れられた処理をしており、漆喰の下地に銅板で
水切りが付けられていました。
また、柱の部分は折り込みを入れて柱のチリ部分まで対処を考えています。

しかし、現実には雨漏りが発生しています。

壁と柱の中へ入り込んだ水は止められないという事です。

 

左の壁ラインの天井に雨シミが出来ています。このラインは2階の壁が載っている通りになります。

 

 

その原因は壁と柱との隙間です。

 

実際に壁に水を掛けると、水が入り込んでくる実験を行いました。

写真の濡れている根元は、2階の柱が立っており、柱と壁の隙間で
ある事が確認できます。

 

壁を伝わり柱との隙間から伝った雨水は、水切りで処理されることなく
そのまま下の梁へと伝わり、天井から雨漏りします。

この隙間に入り込んだ水は、対処が難しいです。

 

柱と壁の間に入り込んだ水の対策は?

対処法として、

当初は、柱と壁の間を伸縮性のあるシーリング処理をし、紫外線からの
劣化を防ぐ為に、その上から外壁用の漆喰仕上げを塗る方法で進めていました。

 

柱の両側に止水用のシーリング処理をします

柱の両側にグレーのラインが見えますが、これがそうです。
シーリングが柱に密着している事で、水の侵入を防ぎます。

しかし、これも長期に渡る防水対策というには心もとないものがあります。
それは時間経過によるシーリングの劣化です。

数年(表層の仕上げ面の対候性にもよりますが)毎にシーリング打ち換え
が必要になるでしょう。

メンテとして、住まい手は数年(表層の仕上げ面の対候性にもよりますが)
毎にシーリング打ち換えが必要になる訳で、
これはやはり面倒な上に財政的な負担があります。

そこで、住まい手さんと話の末、この処理をした上で、更に上から外壁
(焼杉)を張る事にしました。

もちろん、瓦部分は板金水切りの立ち上がりが低いため、やり替えを行い
ます。 水切りの下地からやり替えで、水切りの立ち上げを高くして
取り付ける事で、更に防水の性能を向上させます。

 

写真は2階の壁ですが、左半分は真壁に柱サイドのシーリング処理を
した上で、透湿防水シートを張っています。

右側は、その上に対候性の高い杉板を張りました。

下部は瓦迄ガルバの水切りでのし瓦の1段目を包んでおく。

最悪、外部杉板の隙間から雨水が進入したとしても、防水シートで侵入を止め、垂れた水は下の板金水切りで処理が出来ます。
紫外線も直接当たらないのでシーリングも長期間維持してくれます。

 

対策後は、屋根裏にも十分な断熱を行って、天井を張り替えました。
スッキリ綺麗になりました。

赤身無地の杉板を張ってくれました

 

まとめ

今回は、真壁づくり家の雨漏りに対して行った処理について書きました。
2階部の壁が1階の縁側より後退しているタイプの家は、民家形式であれば
一般的であり、この壁から侵入する雨水の問題は、かなり多くの同住宅に
あてはまると思っています。

結構、縁側の天井に雨のシミがあるのではないでしょうか。

その対策の為、実際に板を張った家も周りにも多くあります。
ただ、板を張っただけですと、それはそれで心もとない処理でもあります。
可能であれば、2重、3重の防水処理をお勧めしたいですね。

大きな費用を掛けてリノベーションする訳ですから、リノベして10年や
そこらで以前と同様に天井から雨漏りするなんて事は、絶対避けねばなりません。

真壁の外観が気に入ってられる方が多いと思いますが、こういった形式の
住宅は、雨漏りには弱い構造であることは間違いないと思います。

真壁構造の和風住宅は市場にまだまだ残っています。
雨漏り対策はこの下屋だけではありません。
大屋根も谷も雨漏りのポイントはあります。

長持ちさせるためにも、機会のある時に長期間安心できる雨漏り対策を
する事をお勧めします。
可能であれば、断熱・気密工事を含めて改修すると、とっても気持ちの
良い空間になります。

上が改修前、下が改修後。柱回りが露出しておらず、水下はのし瓦の1枚分迄水切りで包んでいるので雨漏り対処がしっかりと出来ている

 

柱や梁が外壁に露出している真壁工法の住まいで、雨漏りでお悩みの方、
また、断熱改修、耐震補強を含めた快適空間へのリノベーションをお考え
の方は、ご相談くださいませ。

 

美邸の改修(奈良市)は、奈の町のホームページで設計監理と完成写真を
ご紹介しています。

 

この記事を書いている人 - WRITER -
詳しいプロフィールはこちら