建築家+住宅コンサルタント[一級建築士•宅建士•2級FP技能士]の浅野勝義が、住宅設計の知識や経験から住宅のお悩み相談承ります。

美邸の改修_良質な民家のリノベーション[耐震改修編]

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◆耐震性の向上

今回は、耐震診断と耐震補強についてお話しします。

本建物は、築35年程度の建物で、新耐震になっていたかどうかギリギリ
の状況でした。
建築時期は詳しい資料が無かったので、住まい手さんの記憶によるものです。

建物は真壁工法で、柱も4寸・4.5寸の柱を使い、材料だけでなく大工の
手間を惜しみなくかけて作られた住宅です。

 

現況調査の結果

既存住宅状況調査の概要は以下によります。
また、詳しい建物の概要は、記載いたしません。

木造2階建て在来工法(真壁工法)
日本瓦葺き

基礎: 外部周りで換気口周りでの基礎の割れが確認あり。鉄筋があるかは不明。
土台及び床組: 激しい劣化は見当たらず。シロアリ被害があり。
床:不陸あり 最大で7/1000
柱及び梁: 全体に柱の傾斜は許容範囲内(最大5/1000)
外壁・軒裏: 浮き・ひび割れ・欠損は見られず
小屋組み: 著しい劣化等は無し
蟻害: 数か所に有り(現在活動は無し)
雨水: 2階屋根は特になし。1階下屋部(縁側天井部)に雨漏り跡多数あり
設備配管等: 使われていない清掃用の差し込み及びダクト有り
給排水管等の漏水は無し

筋交い等: 赤外線カメラで確認したが筋交いは見当たらず
床下の土台・大引きの乾燥度合いは、洗面所周りでも15~20% 。
和室の床下は10%前後。

以上が調査結果になりました。

床下の様子

 

 

耐震診断を行いました。

 

当初、耐震診断を行いました。
耐震診断で建物の構造の安全を表す段階は、”評点”として4段階で表わします。

上部構造評点 判定内容
1.5以上 倒壊しない
1.0以上1.5未満 一応倒壊しない
0.7以上1.0未満 倒壊する可能性がある
0.7未満 倒壊する可能性が高い

此方の住まいは、
一般診断で、0.7未満の「(倒壊する可能性が高い」という結果となりました。

これはこの数値は安全上、全く耐震性が不足しており、耐震補強が必要です。
当時は補強金物は全くなく、壁の量で判断していた訳ですが、間取りが古民家
に近いこの住まいでは、和室が4間ある間取りでこのブロックに存在壁量が少ない
ことも原因でした。

和室4間取りの上に2階が載っているパターンですね。

プランニングを提案して、平面計画が決まり、その間取りから耐震改修の計画を
行いました。目標は上記表にあります「評点1.0」以上です。

耐震改修計画を行った結果は、
精密診断で、 1階 1.67、2階 1.74と言う結果で「倒壊しない」最高ランクの
評点となりました。

現況建物の耐震診断 評点は0.7未満

耐震補強後 評点1.67

あとは現場でこれを実行するだけとなります。

 

 

現場が始まりました

「合板が手に入らない」

工事が始まり一番困ったことは、合板が無い(手に入らない)ということ

これは本当に困ります。

現在の耐震補強の一番使われるものとして合板による壁及び床の補強が
有ります。 その為の合板が手に入りません。

トイレがネット市場で枯渇しつつあるのは見ていたのですが、合板とは・・・

代理店やプレカット工場に問い合わせても、全く在庫は無し。
まして、この物件は本間のサイズの為2mx1m又は3mの合板が必要です。
3x6版ですらないのにメーター板は更に現物がありません。

施工会社はしびれを切らせて代用品〔NODA〕ハイベストウッド
(大臣認定N50-CN50、壁倍率2.5倍)を手に入れて来ました。
壁の合板との交換ですから、完全に持ち出しの赤字だと思います。

耐力壁:合板に代わる耐力壁を使用

いやホントに無いのです。
(最終的にはある程度調達されました)

当初設計時は、合板などは無い訳ないとタカを括っていた訳ですが、
本当に1枚も入らないなんてあり得ないですよ。
正直、他の建築業者さんはどうしているのだろうか。

注文する建材や設備機器が全く入ってこない事が普通にあったのです。
設備が取り付けできなくて、引き渡しが出来ないというニュースが
ありましたが、これ、本当の話です。

 

 

筋交いも耐震金物もない土壁の構造

解体後確認した事ですが、やはりサーモグラフで確認できなかった通り、
この建物には筋交い及び耐震金物は一切使われていない事も分かりました。

逆に言えば、耐震金物と耐震壁を取り付ければ、かなりの耐震性が向上
するという事です。
あとは偏心率も注意してバランスよく取り付けます。

基礎も傷んでいる部分がありましたので、既存基礎の補強の為に、
増し打ちによる新設基礎も造りました。

 

解体時の様子と、筋交いの取り付け。1階の旧水周りは基礎・土台からすべてやり替え

 

 

耐震補強を行う

筋交いは木製(ヒノキ)とコボットを使う。

新たに新設する壁には木製の筋交いを取り付けます。
サイズは45×105でヒノキ材を使います。建基法では45×90で壁倍率が
2.0倍ですが、節のある材の断面欠損を考えて一回り大きめにしました。

既存の壁が土壁の場合、耐力壁として筋交いを取り付けるためには、
土壁が邪魔をするため、木製の筋交いを取り付ける事が出来ません。
その為に、コボットというステンレス製の筋交いを使います。

これは半間で壁倍率2.7倍が確保できます。

コボットは古民家改修での耐震補強でも良く使います。

真壁部分はコボットの取り付けで耐震性を確保しています。また、コボットを化粧としても使います。

 

金物補強

耐震補強の算定では、柱と梁、柱と土台との金物についても算定します。

1階2階全ての柱についての取り付け金物も計算による金物指定があります。
面倒ではありますが、工務店さんは一つ一つ金物を確認して、柱の柱頭と
柱脚に金物を取り付けて頂きます。

水平構面が床面で取れない場合は、梁下から合板を張って固定する事も
あります。 下の(左上)写真では床の合板が一部抜けていますが、この
部分から断熱職人が入って吹付を行い、断熱処理を行った後に空いている
部分に合板を貼り付けます。

大屋根と下屋部分の屋根裏は、隙間が殆ど無い為に取り付けに苦労する
部分ででもありますね。

 

木(ヒノキ)の筋交いと金物(柱・梁・火打)設置

 

基礎の補強

 

外部周りの基礎にクラックがありました。

この部分を補強するために、既存の基礎の外側に新たな増し打ち基礎を
設けます。(状況によって壁の内側に設ける場合もあります)

 

特に外部周りの基礎にクラックがあった為、増し打ち基礎で対応します。

耐震改修が済めば、今後は一安心です。

 

耐震改修は、地震に対してとても有効な対抗策

耐震診断と耐震補強を行っていない住宅は、まだまだ多数あるでしょう。

南海トラフ地震については、マグニチュード8~9クラスの地震の
30年以内の発生確率が70~80%(2020年1月24日時点)とされています。

奈良は内陸部である為に津波の心配はないかもしれないですが、地震に
ついては震度6強~震度7が地域により予測されています。

昭和56年以前に建てられた建物(旧耐震)は、これだけ大きな地震に耐える
構造にはなっておらず、奈良県内でも多くの住宅が倒壊すると考えられます。

安全の為に、可能な限り住まいの耐震性をあげておくことをお勧めします。

 

美邸の改修(奈良市)は、奈の町のホームページにて、設計監理と完成写真等
ご紹介しています。

 

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