私の設計方法(リノベーション・リフォーム編)
今回はリフォーム・リノペーション設計の設計方法をお話したいと思います。
うちでの設計方法ですから、他の設計事務所さんとは多少異なっているでしょう。
若い頃は住宅だけでなく共同住宅や事務所・店舗等で規模に関わらず設計を
させて頂いた中で、住宅の設計という用途と規模に一番適していると考えたものです。
初めに家づくりのリノベーションを依頼する場合、貴方の要望が実現できるかどうか
心配ですよね。 建築家に依頼すると、話を聞いてもらえなかったり、勝手にすすめ
られたりしないかと心配ですから。(勿論、どれ位の要望かにもよりますよ。)
大抵の内容は基本の仕様に含まれているので、それに含まれている様な細かい部分
までの打合せは基本的に無いと思います。 例えば巾木の樹種とか形状とか。
実際に形状希望された住まい手さんがおられましたし対応は可能です。
ただ、こういうパターンは珍しいですね。
内容が実現可能かどうかはお聞きしてみないと分かりません。
住宅会社では殆どが仕様で決まっている事で、変更できないと言われている事も多く
住い手さんには大切な事なのでしょう。
まあ、大抵の内容は対応可能です。
うち(奈の町)ではご希望ある部分について、細部まで決める事は可能です。
理由は、住い手さんの想いをしっかり聞いて、それを実現する為に知恵を絞る事、
そしてこだわり優先度の高い部分は実現することが設計の基本だから。
では、その打ち合わせはどの段階で行うか。
そのタイミングは、設計のスタート【プランニング提案】時にご希望内容をお聞きする
「ステップノート」にある、要望をお聞きするページに記入して頂いて、その内容に
ついて詳しくお聞きします。
では、設計の初めに行う【プランニング提案】についてお話したいと思います。
これはリフォームに限らず、新築の場合も同じなのですが、
【プランニング提案】とは、住いの平面図を作成をする事をイメージされがちですが、
実はそれよりももっと大切な目的があるのです・・・
【プランニング提案】をする理由
プランの流れ
初めに設計は、「プランニング依頼」を頂いてから始めます。
ステップノートの中に書き込んでゆくとこういった事柄をお互いが確認できるように
作られています。
〇自分達の要望内容の本質を知る
〇現在の暮らしを聞かせて頂いて、依頼者の「普通」を理解する事
〇現在の持ち物を調べる。・・・捨てるもの、買い替えるもの
〇将来の自分達を考える… 10年、20年後は自分達はどうなっているかを考えてみる
こだわりや要望が理解されたのち、現在の建物(住まい)を見せて頂く事になります。
〇現地建物の調査及び測量
〇現況建物の耐震診断・・・現状建物の安全性を理解する事
よく「先に現地を見て欲しい」といったご希望がありますが、
住い手さんが何をしたいのか、どの様に暮らしたいのかを知る前に現地を見ても、
解決に繋がるような情報は得る事はできません。
ただ、現況建物の問題点が分かるだけで、それではただの問題点の修繕相談になって
しまいます。目的がそれでしたら施工会社さんに依頼するのが近道です。
設計者は暮らし易い住まいの提案、そしてそのための改修計画が仕事です。
現状の建物を知った上で、住い手が暮らしやすい家をイメージする為に、あらゆる方法
を考えます。
〇改修・・・現在の建物の中での最大の暮らし易さを考えてみる
〇減築・・・現在の住まいが広すぎるのであれば減築して考えてみる
〇増築・・・現在の建物では不足する部分を増築案で解消する
〇建て替え・・・リノベーションに対して費用対効果が低く、建て替えを選択する案も検討
の、すべてを検討する事を行います。
住い手さんの想像していないプランもある訳ですが、意外に心の中で希望している事だったり
するものなのです。
これらは住まい手さんとステップノートをベースにして対話によって探し出すという
作業ですので、アンケート(要望書)だけで机上でプランニングすることはありませんし、
現地を見ない、想いを聞かない、持ち物を調べない、会って話さない。
これでは【プランニング提案】は出来ません。 (これは新築も同じです。)
提案は1回限り
〇プランの細かい部分は後でじっくり詰めることは出来ます。
その理由は、提案するプラン内容で満足してもらえない事は無いと思っているからです。
それよりも、住い手さんの要望が汲みとれているかが大切だと考えています。
〇頭の中でイメージ出来るまで何度もお会いして話し合いを重ねる事をお願いしています。
〇プランニングの期間は2週間から3週間をお願いしています。中には1ヶ月以上かかる場合
もあります。纏まったら提案という形にさせて頂いています。
〇提案は、2案又は3案が多いです。ただ、プランに迷いが無ければ1案のみの場合もあります。
〇提案内容で設計者(私ね)と気持ちが合わないと判断すれば、その段階で終了という形で
お願いしています。
大切な事、プランニングの理由(わけ)
〇プランニングとは、間取りの図面を作成することだけではないと考えています。
〇住い手さんと設計者が今後1年の時間を掛けて家づくりをするためのお見合いの様なものですから。
〇設計者の想い・・・住い手さんとのお互いの気持ちが合うかが重要です。その為に、
住い手さんの人柄・世代・想い・価値観・考え方を知ることを心がけています。
気持ちが合わないまま進めると、後でお互いが苦しくなってしまいます。その為にも
お互いの信頼関係が築けるかを見ています。
〇住い手さん・・・この設計者(私ね)は、自分達の事(考えや要望)を実現してくれると感じるか。
それと、ご自身の予算で希望する建物が建てられるのかを再確認する事も大切です。それが
難しければ予算を増やすことができるのか、 反対に規模を小さくすることは可能かも。
〇それらを確認する機会が【プランニング】だと思っています。
プランニングは有料です
〇奈の町は設計業務のみで成り立っています。プラン料は実質的な人件費になります。
〇プランニング料は計画案が出来るまでの打ち合わせや調査等の費用になります。
リノベーションを成功させるカギ
リノベーションを成功させるには大きなカギが3つあると思っています。
最後の4つ目は、リノベ後にどう感じるか。 これは成功した実感になるのでしょう。
長年抱えてきた住い手の問題が解決できたか
〇これが一番大切です。問題の解決を実現することが最大の目的です。
〇実はリノベ計画中に、仕様や設備機器等に囚われて、本質を忘れる場合があります。
〇何のためにリノベするのかをしっかりと意識して行うことが大切です。
予算内でリノベーションが可能か
〇リノベーションして苦しくなるのであれば諦めるのも一つの判断だと思います。
〇ある程度の自己資金がある事。建築工事費の1/3と設計料、諸経費は自己資金で賄うのが
理想です。
〇リフォームローン融資額は思いの外少ないもの。融資についても事前調査が必要です。
工事中の住まいをどうするかも考えておく
〇工事期間中、広い住まいであれば現在の住まいの一部で居住するケースもあります。
その場合、キッチンとお風呂をどうするかも考えておきましょう。
〇一般的には賃貸等へ引っ越しして、建物を空き家にして工事を行う事が多いです。
引っ越し費用や家賃・敷金等の予算も忘れないようにしておきましょう。
「もっと早くリノベーションしなかったのか」と感じてもらえるように
〇住んでみて、その住まいの快適さを体感してほしいと思います。
〇この言葉が満足度を一番表していると思います。
設計の進め方
うちの事務所では設計の殆どが住宅の設計
〇設計の手順は、基本設計から実施設計へと進む手順を採りません。
〇設計を進める流れをステップとして捉え、決めるべき項目を段階的に区切り、
住い手さんが理解しながら次の段階へと進む方法を採っています。
〇設計図書のベースは打合せの段階でステップ毎に書き加えて行く様に出来ています。
ステップノートを使って、各段階的(ステップ)に設計を進めて行く
- ステップノートの構成(流れ)と要望内容をしっかり確認します。
- 現況建物調査と耐震診断を行います。
- 空間計画(プランニング提案)・・・建物内部のイメージを提案します。
- 基本計画案の確定・・・計画平面図のあらかたまで確定します。同時に今後の設計振興のために構造のチェック(耐震補強計算)を行います。
- 展開図やスケッチ等で住まい全体の収納や家具を提案します。収納場所、物の分別と量、家具の設計、家電調査、等を全て把握した上で持ち込み家具以外は制作が基本で、持ち物に合わせてすべて設計を起します。
- 3Dレンダリングを作成。・・・これは外観や内部イメージを確認する為に作成します。イメージや色合い、雰囲気を目で見て確認できるように作図します。
- 建具等・・・ 外部建具と内部建具の2種類があり、建具の種類とサイズ等を確認します。昨今では断熱性能も要望が多くありますので基本的な仕様についても確認します。
- 内部仕上について確認します。 床・壁・天井、そして断熱や外壁、屋根、樋、その他内装はどんな材料を使うのかを現物見本で確認して決めます。
- 設備機器・・・キッチン・浴室・給湯器などを要望に合わせて提案します。ユニットやご希望のキッチンメーカー等ありましたら見積もり等も確認します。 厨房に関わらず、洗濯感想や発電・蓄電等もこの段階で機器を確定してゆきます。
- 電気設備・・・必要な設備の電気容量、電源コンセント・照明スイッチ等を決めます。またインターネット環境や、照明プラン、エアコン等の冷暖房計画もこの段階で確定します。
- 給排水設備・・・給水、排水関係を確定します。具体的には洗面所やお手洗いの水栓・ボウル・ペーパーホルダー・便座等を確定します。
実現したいこだわりがある場合は、これらのステップの段階で細部を決めます。
細部のこだわりがある場合は、事前に聞かせて頂いていたものをこの段階で決めて行きます。
こだわりを実現する為の提案はこちらから致します。
うちでは設計業務の全てを自社でこなす
設計業務を外注に依頼することは殆どありません。 業務の全てを自社内で纏めます。
〇基本計画
〇意匠デザイン・・・空間計画、詳細図、家具・建具の設計
〇構造計画・・・構造計算、構造図の作成
〇設備計画
〇設計図書の作成
〇建築申請
その理由は、分業にすると時間が掛る上に手直しが面倒なこと、そして変更があっても
すぐにチェックが出来て変更が出来るかの判断が出来ることにあります。
ステップでの打ち合わせが終わると同時に設計に必要なデータが手に入っている様に作成しているので、打合せ後は設計図を作成する作業だけ。
設計図が出来ると施工業者への見積もり期間へ
〇基本的に、施工業者は当方からの指定は有りません。どこでも可能です。可能な様に設計図を作成しています。
〇ご希望あれば過去にして頂いた施工会社を紹介する事も可能です。
〇当然、相見積もりも可能です。
見積もり書の受け取りは、建築主・設計者・施工業者の3者で同時受け取りします。
〇見積書の受け取りは、奈の町事務所で3者立ち合いの上受け取ります。業者さんとの事前交渉等は一切ありません。
〇見積もり頂いた施工会社それぞれの方に自社の強みをPRして頂き、その中で希望される施工会社を選んで頂くことができます。
〇受け取った見積書の価格の分析と交渉を行います。
〇金額が合えば工事契約へと進めます。もちろん、工事契約も奈の町事務所にて行います。
〇どうしても金額が合わなければ、施工業者を変えて再見積もりを行います。
請求書は全て奈の町経由。チェックしたもののみ支払いへ
〇追加工事は建築主が承認をしたもののみ有効。奈の町で経由致しませんので追加トラブルはありません。
〇奈の町が防波堤の役目をしてチェックしています。
工事契約後は、現場監理となります。
〇基本的に現場へは1週間に1度。ただし現場の緊急打合せとして施工業者と事務所での打合せは随時行っています。
〇リノベーションの場合は現場の状態で至急確認が必要になる場合が多く、現場監理の回数はどうしても増えてしまいます。
〇現場が進むと問題は出ますが、解決できない事は現実にはありません。
〇問題があるとすれば、現況の問題解決で追加費用が要る場合で、対処は少額であっても住まい手に確認を取ります。OKなら見積もりを取ります。金額了解なら工事を進めます。
〇完成すると住まいが一新しますので、暮らし方も変わるし、何より快適さを実感できます。
まとめ
私の設計スタンスと言いますか、設計に対するこだわりは以下の内容で、このスタンスは住まい手さんからのご希望があっても変わらないです。
私(奈の町)の設計スタンスは、
〇和テイストのオリジナルの個性ある住まい
〇現地の条件を生かした気持ち良く住み心地の良い住まい
〇木の特徴を生かした住まいが得意
〇住い手さんのこだわりを実現することを心掛けている
話は変わりましたが、今回の設計の方法について内容をまとめます。
1. プランニングをする理由
〇大切な事は、間取り図の作成だけではなく、建築家と住まい手の気持ちが合うかも大切。
〇プランニングが始まると何度もお会いして住まい手さんの要望を聞かせて頂きます。
〇その中でお互いの信頼関係を深めること。
住い手:この人なら自分達の事を理解して実現してくれる
私:この住まい手さんの要望を実現して喜んでもらいたい
〇これが出来れば家づくりは半分以上成功したと言えると思っている。
2. リノベーションを成功させるカギ
〇その計画は、今まで悩んできた問題が解決できているか。
〇希望を実現できる為の予算は大丈夫か。
〇工事中は自分達はどこで暮らすのか。
〇最後に「もっと早くやっておけばよかった」と思えるか。
3. 設計の進め方
〇私の設計は、住い手さんのどんな暮らしがしたいのかという想いを聞くことと、進行に合わせたステップ形式で設計を進めます。
〇細部でこだわりのあるときは、このステップの段階で行います。
〇毎回、ステップ毎に楽しめる様なイベントを考え一緒に進めます。
〇打ち合わせは、(プランニングを除いて)毎週1回打合せで、約三か月程度が目安です。
〇見積もりは、相見積もり可能。見積もり書受け取りは3者同席で受け取りします。
〇見積書の分析と価格交渉も行います。
〇請求書は全て奈の町を経由。承認の無い追加工事は認めません。
〇契約を交わすと工事監理になる。現地へは週1回完成まで現地へ伺います。
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