設計事務所に依頼せず、工務店やリフォーム会社など工事を直接発注する際の注意事項について
状況
古民家(中古住宅)で快適に暮らしやすくするためにリフォームを考えているが、進め方が分からない。
また、家族の暮らし方が変わったタイミングで改修を考えた。
リフォーム・リノベーションを決めようとするタイミングは、こんな機会になるのではないでしょうか。
その際、進め方が分からないので設計事務所に相談しようと思った。
奈の町へご相談に来られた方のご相談例からお話したいと思います。
ご相談者
現在の住まいは建物が古いため、地震の際の安全性にとても不安がある。そして現状の問題として、冬の寒さ、動線が悪い、段差、床が沈むなど暮らしにくいところを解消したい。今回、それぞれの気持ちの整理ができたタイミングでリフォームしようと。進め方として設計事務所に依頼するのが良いと思って頂いて来られたというお話です。当社へ相談頂いたのですが、お話をお聞きすると改修内容と規模に要する工事予算が厳しいため、その予算から設計料として費用を頂くには住まい手さんの負担が大きいと思いました。実際リフォーム費用を1000万までと考えてられる方が多いのですが、伺った希望内容と改修範囲を考えると、どうしても予算が不足してしまいます。
なぜ予算不足になるのか。その理由とは ?
▢ 改修を構造から行う場合の改修費用は、実は新築とほぼ変わらない。
工事費の目安は、工事面積(㎡)当り約20万程度が目安になります。
▢ 概算計算してみると・・・
施工面積20坪(66㎡)で工事費が1300万程度、30坪も改修すれば2000万程になるイメージです。
それに対する設計料は、別途に少なくとも150~300万が必要になります。
実際のところ、1000万程度の工事予算の場合だと、工事予算に対する設計料割合の負担が大きく、その費用で設備等が揃ってしまうため、直接施工会社へ直接相談するようお勧めしているのです。
実例
case-1
敷地が広く建物も複数ある。リビングが暗く暮らし易いリフォームを望んでいる。
リフォーム予算は厳しくローンで考えている。 施工会社は決めているがデザイン力が心配の為、ご相談に来られました。
case-2
古民家の改修相談で、母の住む住まいを暮らし易い家に改修したい。後から自分達夫婦も引っ越しの予定。 予算は未定。工事費の概算をお話しましたところなかなか厳しそう。他の設計事務所へも相談したいとの事でした。
case-3
自分の周りには建築に詳しい人がいない。どう対処すればば良いか分からない。
予算も厳しいが、工事予算を減らしても設計者へ依頼したい。
現在までのケースをお話致しますと、奈の町でお請けした工事予算の多くは、1,500万〜で行いました。
それも建物全体ではなく、建物の一部を改修する形です(メインの生活空間です)。
そこで、予算が厳しい方、やりたい事が分かっている方に対してですが、設計事務所に設計監理の
依頼をしないで直接施工会社へ依頼する際の方法と注意点についてお話ししたいと思います。
見積もり依頼の仕方
見積もりの取り方
▢ 相見積もりをする
・・・これをしないと安いのか高いのかが分からない。
▢ 相見積もりを依頼する際の注意点(伝える事)
- 見積もりの際に相見積もりであることを相手に伝える事
- 依頼条件は必ず同条件で
- 計画図と仕様書を渡して概要を説明する。明記の無いものは施行会社での提案をお願いする
- 支払い条件をきちんと伝える
- 工事期間を確認する
- 見積依頼の説明内容を途中で変えてはいけないし、相見積もりでの内容変更はNG。
- 受けたい補助金等があればこの段階できちんと伝える。 後から言い出すと出来なかったり、別途費用が掛かる事が多い。
- ある程度詳しい見積書が欲しいと伝える事。○○工事一式いくらなんて言う見積書が出た段階で、その会社はNG。詳しい見積書を求めるとどうしても工事費が高くなりますが、含まれているかどうかがはっきりするので、内容を見て自分の判断で削る事も出来る。
▢ 提出された見積書の見方
- 見積書が出ても、額面が安いだけで決めてはいけない。要望内容がきちんと工事に含まれているかどうかのチェックが大切。
- 同条件で比べることに意味がある。金額が易い高いはそれから。
- 含まれていない内容と項目が多い場合は、全体に住まい手の希望を聞いていない傾向があると考えられる。
分からない項目がある場合は、しっかり内容を聞く事です。これをしないと不明なお金を支払う事になります。
具体的に自分のやりたいことを伝える方法(計画図と仕様書)
・・・本来は設計者がそれを作成する仕事になるのだが、設計依頼をする予算が出てこない。
▢ その1
やりたい(改善したい)事をリスト化する。
例えば、段差解消・手すり取り付け。暑さ寒さの解消・暗い・水廻りが古い・風呂、トイレが遠い。
地震が来ても大丈夫な様にしたい。生活の中心を1階に移したい。等々。
ワンポイント
やりたい事が多ければこれらに優先順位を付けておけば、工事費の減額時に役立ちます。
▢ その2
設計事務所で、最低限の現況図と計画平面図の作成を依頼する。自分たちのやりたい事を伝えて計画図と仕様書を作成します。それに自分達の想いやしたい事を書き込むことで完成させる。
そうすれば、共通の条件で施行会社へ相見積もり依頼をすることができます。
工務店・リフォーム会社の選び方
実例を見せてもらうのが良い
その際、見た目だけではなく要望に対してどの様に工夫し工事をしたのかを教えてもらうと施工会社の考えが分かります。 見積書を受け取る際に、施行例を幾つか見せてもらえるかを聞いておくと良いでしょう。
会社として魅力があるかを見る
可能なら見積期間中に事務所へ伺ってみるのをお勧めします。
会社内の雰囲気や、社長さんの考え方なんかも窺い知ることが出来るかも。
個性が強いとか、ワンマンとか、社員等に対する話し方等も参考になります。
スタッフの方の雰囲気も大切です。
私は必ず工場にもお邪魔して様子を見せて頂く事にしています。
それと、過去の作品だけで判断しないのも大切です。
資本力と信用もポイント高い
▢ 個人か法人か
建設業許可番号や資格等があるかを確認しておいてください。会社に看板として掲示していますし、ホームページがあれば表記しています。表記は「建築工事一般』になります。
1500万円以上の工事を請け負う場合は、建設業許可が必要です。
▢ 設立時期
継続期間は大切です。
家の耐久性とメンテは長い期間を要します。 連絡すると会社がなくなっていた、なんて事があると困りますよね。 そういう意味では設立10年以内とかは、長い将来を考えるとちょっと心配かも。
古い会社というのはそれだけでも信用が高いといえるのです。
現場担当者に幾つ現場を担当しているのか聞いてみる
2~3件ならとても良いと思います。
一人10件以上とか言う会社は、私はお勧めしないです。 こういう場合の現場監督は資材の手配者でしかなく、現場自体を管理していないので現地の問題に対処する時間がありません。というか、一人で10件なんて管理出来るはずがありません。当然、現場でトラブルがあっても対応できない可能性が高いです。そもそもそんなに現場をしっかり管理が
出来ていないのですから。
契約前のチェック
工事契約書の内容を事前にチェックする
▢ 四会連合書式等、公の契約書等を使う。
約款も含めて施工会社独自の書式は施工会社にとって良いように書かれている事が多いので、こういった書式を使った契約をお勧めしたいのですが、出来ない場合はしっかりと契約書の内容と約款は読んでおくこと。面倒でも後の事を考えれば今しておくことです。
▢ 工事契約書と工事内訳書を一緒に綴じてもらうこと。
内訳書がないと追加費用の根拠が曖昧になってしまいます。追加や変更があった場合でもすぐに
価格等を確認できるよう契約書と一緒に綴じてもらうように依頼しましょう。
▢ 支払いの金額と支払い時期をきちんと確認しておく事
お金の準備もしておきましょう。特に初回の支払い過ぎに注意。詳しく後でお話しします。
本来は工事の出来高払いが一番良いと思います。 しかし出来高の判断が出来る専門家がいない場合は、工事期間中で均等分割なりする方法がとり易いです。
▢ 完成時期の確認と、工事が遅れた場合の支払いについても確認しておく
融資を受ける場合
銀行への事前相談が必要で、条件によっては融資が厳しい場合もあります。
リフォームローンは審査も渋く、融資の上限も低いので思っている金額が出ない場合もあります。
ただし、土地建物を担保に入れる場合は貸してもらえる可能性は高くなります。
支払いのバランスについて
一般に新築での施工会社への支払いは、着手1/3、中間1/3、完成1/3と言われていますが、リフォームは工事期間が短いために、支払いのタイミングが着手と完成の2回である事も多いものです。 初めにそう言ってくれる会社は安心かなと。工事期間内で出来高払いという方法も行いますが、出来高の判定が出来ないので、月毎に分割払いという方法も有りですね。 逆に、初めに支払いを沢山求める会社は、資金繰りが苦しい会社である事が多いとか。工事費の1/3を支払って着手前に倒産なんかは見てられないですから。うちの会社では着手金は5%、期間中は月毎の出来高払いもあります。
工事中その建物で生活する場合(期間中引越しする場合は除外)
朝と夕方の戸締りは自分達で行う事。
また、契約前にはキッチン、トイレ、浴室をどの様に使うのかも事前に確認しておく事が大切です。
施工会社によっては、古いキッチンを移設してくれたり、手持ちの浴室のユニットなどを貸してくれることもあります。浴室ユニットをリースしないといけない場合は、別途費用が必要になる事も忘れずに。
工事に入ってからのチェック
工事中での変更はしない
工事中、現場を見てその場の判断で行う変更は、割高で工期が伸びるだけで良い事は何も
ありません。原則、しないことです。
現場を見ると室内が暗く感じるので窓を大きくしてほしい。なんて。
内装の仕上げが入れば十分明るくなるにも拘らず、その場の判断で買えてしまうケース。
これはやめましょう。
しかし、契約内容と違う工事が発見されたら、現場管理者にすぐに相談して工事の是正を
してもらうように話をする必要があります。
設計者(監理者)がいない場合、チェックできるのは自分だけですから。
現場の職人に何を言っても変更はしてもらえません
職人やその親方に直接指示をする方がいますが、これは工事の内容を変えてしまうことなり
追加工事になる可能性が高くなります。
後で追加費用が出てきてトラブルになる原因がこれではないでしょうか。
対処法は、現場管理者(監督)に話す事です。
現場に問題のある場合は現場監督から手直しの指示を出してもらう。
それ位現場管理者は重要な立場にあるものです。言えない立場の人は監督ではありません。
また、追加工事や変更を行う場合は、必ず見積もりをとってから発注をする事です。
これをしないと話した内容がみな追加工事になってしまう可能性があリます。
昨今は10時と3時のお茶は対応せずとも構いません
気にされる方が居られますが、大抵は自前で用意しているので気を使う必要はありません。もちろん、それで建物に何か影響がある事はありません。
まとめ
設計事務所を入れないで施工会社へ工事発注する際の注意事項について
状況
古民家(中古住宅)のリフォームを考えているが、進め方が分からないので、設計事務所へ来られた。
話をお聞きすると、予算が少なく設計料の負担が大きいことと、住まい手さんがやりたいことや
イメージが既にある方なので、直接施工会社へ相談に行かれるのをお勧めした。
そこで、設計事務所に設計依頼をしないで直接施工会社へ依頼するためのチェック方法とは?
見積もり依頼の仕方
見積もりのとり方
相見積もりをする。ただし必ず依頼条件は同じ物を制作して説明し、変更はしないこと。
支払い条件、工事期間を明確にし、補助金などがあれば先に伝える。
明細のある見積もりを依頼し、出て来た金額だけで決めてはいけない。
自分のやりたい事をリスト化する。また要望に順位をつけておけば減額時に役立つ。
設計事務所で現況図と計画平面図を作成してこの図面に希望内容を書き込みして完成させる。
施工会社の選び方
実例を住まい手の要望にどのように対処したかも合わせて聞く。
一度、事務所に行って会社の雰囲気を感じてみる。
会社の信用度も加味する。
契約前のチェック
契約前に、契約書と約款を見せてもらう。
支払いのバランスを考える。
工事中の暮らしについても考えておく。
工事に入ってからのチェック
工事中の変更はしない。問題があっても職人に言わない。
問題点や手直しは、必ず現場監督に話す事。
追加工事がある場合は、必ず見積もりをとってから発注する。
浅野勝義/奈の町