自分に合う住宅の選択〜第2回「どんな住まいが自分たちに合うのか」

物件選びをする前に住まいについて検討すべきこと

家が欲しい! 自分に合う住宅の選択
A) 自分らしい家をつくる人の選択
1.土地を買って家を建てる
2.中古住宅を買ってリノベーションする
3.中古マンションを買ってリノベーションする
B) 住宅を選びそのまま住む人の選択
1.新築分譲戸建
2.新築分譲マンション
C) 親族が所有する不動産に住む人の選択
1,親族が所有する家を改修して住み継ぐ
2,両親の家を2世帯住宅にして住む

今回のテーマ
第2回「どんな住まいが自分たちに合うのか」

現在、家探しをしていて、色々見ているんだけど、
いったい自分達はどういう家が合っているのか分からない。
そんな方へ、どういった物件に絞って探せばいいのかを見つけたいと思います。

それには
1.住まいに求める自分達の要望はなにか、
2.どんな住まいが自分達に合うのか、
3.どんな物件を探せばいいのか、
4.どれ位のお金(頭金を含めて)が必要なのか、
5.将来その住まいをどうするのか。

これらを知れば、各住まいの特徴とリスクを理解した上で
何を探せばいいのか、どういう住まいを手に入れればよいのかが
見えて来ます。

闇雲にこれも良いな、あれも良いなといった、ふわっとした
家探しはもうやめて、しっかり的を絞って探しましょう。

前回のテーマでは、
貴方の現在の住まいにどんな問題と心地よい所をリストアップする事で

それが次の住まいのこだわりになるという話をしました。

今回は、
要望ともいえる条件をクリアするには、どのような住まいなのか

次の住まいを大きく賃貸とするか、住宅購入とするかで分け、
それぞれの中で更にどういったものがあるか。
また、どういった特徴があるのかをお話しする事で、自分に合う住宅の選択を
絞ってみたいと思います。

大きく分けると、
1.別の賃貸へ引っ越しする
〇マンション
〇一戸建て住宅

2.住宅購入
〇マンション(新築・中古)
〇一戸建て(新築・中古)

3. 親族が所有する不動産に住む
〇親族が所有する家を改修して住み継ぐ
〇両親の家を2世帯住宅にして住む

目次

別の賃貸へ引っ越しする

賃貸派は、別の賃貸一択になりますね。

要望に合う別の物件を探す選択です。
購入するという事はその場所に定着する事であり、賃貸派としては住まいを
自由に選択できることが大切ですから。

賃貸マンション

 自分達の多くの要望をクリアする別の賃貸マンションへ移る。
空間や部屋数だけが問題であればこの選択はありですね。
ただ、賃貸の場合は基本的に空間の広い物件は少ないかもしれません。
都市整備公団(UR)のマンションや分譲貸しの物件も選択肢としてありますね。

 賃貸マンションを選択する際の要因としては、ワンフロアで部屋が構成されて
いるので動線がシンプルである事や、2階以上だとセキュリティにも優れている
ところがあるでしょう。 高層階
に住むのが好きな方もいますね。

賃貸中古戸建

 要望を整理すると、問題解決には上下左右に住戸のあるタイプでは無理で、
独立した住宅タイプを1棟借りする事が解決になる場合の選択でしょう。

 多人数家族であったり、声などの音を出したりで階下に迷惑を掛けられない、
庭が欲しい、戸建て住宅並みの広さが欲しい、人もこの選択が要望を解決する際の選択になるのでしょう。

住宅購入

払い続ける家賃がもったいない。又、自分所有の家を持ちたい人の選択です。
昨今ではDIYで自由に改装したい方が多い事もあり、賃貸では限界を感じて持ち家を
手に入れる。
そんな方もいるようです。

住宅購入には、中古住宅の購入と新築住宅の購入があります。
何れにおいてもそれぞれの注意点が異なりますので、これらを知った上で
最良の選択を進めてください。

では、住宅購入について、それぞれ詳しく説明してゆきます。

マンション

■ 新築マンション

街中でインフラや商業施設が身近にあり、住居内に段差や階段のないフラットな住宅が、
以前までの若い世帯が一次収得者として家を建てる前に購入する住まいというイメージは
今ではなくなりました。
むしろ終の住まいとして購入の選択としても十分考えられています。
段差や階段のない事がメリットであり、交通のアクセスや商業施設に近いというのも
高年齢層のニーズに合っているのでしょう。

国土交通省の「平成29年度住宅市場動向調査報告書」のデータによると、
「分譲マンション」の一次取得者の平均年齢 39.5歳(表上)、二次時取得者の世帯主の
平均年齢は59.0歳(表下)と高齢になってからの購入も多く、借入金ではなく、自己資金
で不動産を購入している人が多いという結果になっています。

高齢の方が新築マンションを購入して住む、というスタイルに変化しています。

国土交通省の「平成29年度住宅市場動向調査報告書」のデータ

添付データ : 国土交通省の「平成29年度住宅市場動向調査報告書」

■ 中古マンション

中古マンションの選択は、割安で購入できるメリットや、駅近であったり美観で
あったりと、購入者の主観や要望が大きく影響して選ばれることでしょう。

しかし、中古マンションは価格その他建物の条件だけで判断して購入しないで
欲しいです。
中古マンションは管理を買うと言われる様に、マンションの管理状態がとても
大切です。

管理というのは、賃貸にはなかった区分所有者(所有者)が運営するマンション
管理組合の事で、管理状態やマンションの資金計画(管理費や長期修繕計画)が
しっかり組まれていないマンションは、資金不足から修繕が先延ばしとなり、
劣化が進むといった負の連鎖が発生します。
購入時には管理状態と共に長期修繕積立金も十分ある事を確認しておきましょう。

管理の状態を評価で表すのに、国土交通省が定めたマンション管理計画認定制度
が2022年4月から始まりました。また、一般社団法人マンション管理業協会による
評価制度もはじまりました。これはマンションの管理状態について全国共通の
基準で評価を行うもので、その評価も判断基準として選択肢の一つになります。

また、昨今では中古マンションの需要は、高齢者や女性が購入する住宅としても
注目されています。特に高齢者は賃貸への入居を拒否されるケースがある事から、
安心して住み続ける住まい手としても購入される対象にもなっています。

専有部分の改修については、マンションは構造が躯体で完結しているので、
内部空間は自由に間取りの変更が出来ます。(排水管経路については制約がある)
その為、リノベーションの自由性は高いです。

建物については、マンションと専有部分の既存建物現況調査(インスペクション)
を行った上で購入されるのをお勧めします。

戸建て住宅

■ 土地を買って、家を建てる

好きな場所の土地を購入して、自分達の暮らしに合う家を建てる。
そんな理想の住まいを建てたい方の選択肢になります。
土地と建物を別々に購入する訳ですので、それこそ自由に土地を選び、自由に計画し、
自由な建築会社に依頼できる訳です。
その反面、それぞれの利点欠点についての知識も必要になります。

例えば土地。
浸水・洪水リスクと活断層・地盤、土砂災害については事前に調査が必要ですし、
敷地の持つ法令条件と敷地が面する道路についても理解が必要です。
そもそも建築が可能なのかから調べる必要があります。

環境とも気に入り、気に入った土地を購入した後は、住まいのプランを考えることに
なります。これが楽しみという方もおられますし、これを設計事務所に依頼する方法も
あります。
計画が決まれば、建築をどこで建ててもらうのかを決めます。
仕様等を決めて、建築会社に見積り依頼、住宅ローンの手続きを終え、工事が始まり、
完成と同時に登記と残金の決済が済めば、晴れて自分のものとなるのです。

私は、開発分譲地以外の土地を購入されるのであれば、土地の購入段階から専門家か
コンサルタントに入ってもらう事をお勧めします。

というのは、分譲地や開発地の1区画であれば敷地についての注意点は少ないですが、
一般の土地を購入する際は見えない諸問題がありますし、購入者がリスクを理解して
いる事はあまり無いと思います。

不動産業者の重要事項説明だけでなく、敷地の情報とリスクをきちんと調べてから
購入するのがベストだと考えます。

建築も同様で、建物が契約通り建てられているか、設計図書があればその通り建てら
れているか、見積もりには希望した要望が組み込まれているか、無駄な費用は無いか。
そしてあとから知らない追加費用は出ないのか。

本来家づくりで楽しい土地探しやプランニング、仕様などが楽しめない。
だからこそ、自分達の事を考えてくれる専門家をお勧めします。

好きな場所に家を建てるには、1~2年の時間を掛けて完成する大事業とも言えます。
そして、資金も分譲住宅よりずっと多いお金が必要です。
その分、完成には満足度が違います。
住まいに強いこだわりのある方には是非お勧めしたい選択です。

■ 新築分譲住宅

幾つかの区画の中で気に入った場所を選択し、そこに自分達に合わせた(予算と要望)
建物を建てた住宅を、土地付きで住宅を購入する方法です。

建物の間取りと仕様、予算から規模がある程度決まっています。 オプションとして
選択も可能ですが、全て自由になる訳ではありません。
住宅の仕様が決まっている為に、住宅分譲地の中の住宅性能もほぼ同じと考えて良い
です。近年は住宅性能が高い事を謳う会社も多く、省エネルギー性も高くなりました。

土地と建物を一括で契約して、完成時に決済する方式なので、手続きが少なく、
申し込み時に住宅ローンが通れば問題なく新居を手に入れることが出来ます。

土地を探し、売買契約し、プランをして、工事会社を選んで見積もり、工事契約・・・
こういった手間やリスクが不安な方に合う選択です。

特にリスクという意味では、土地探しにおけるリスクの大半が消えてしまいます。
買ったものの家が建てられないなどと言った心配はありませんし、建物のサンプルは
現地に建っているので安心です。

■ 中古住宅

既存住宅をそのまま購入する方式で、希望する地域で手に入る可能性があります。
ただ、中古住宅はお安く手に入る分、リスク度合いは高いです。

なぜかと言いますと、建物の状態によってはこの後リフォーム費用がいくらいるかが
大きく変わるからです。
中古住宅を購入してそのまま使いたいと考えてられる方は、貴方の専門家が必要です。

基本的な事として、その建物(敷地)再建築可能かどうか、があります。
市街地(市街化区域内)にあっても、接道義務(2M)が不足している場合です。
再建築が不可能ということは、お安いでしょうがこの建物は永久にリフォームしか
使用出来ないという事です。そういう不動産であることを理解しておきましょう。

また、市街化調整区域で、建て替えするには難しい条件をクリアしないといけない
ケースがあります。
例えば、その住宅が農家住宅の場合ですね。
農家住宅の許可は、その人本人に出たもので、第3者が収得し居住する事は認め
られていません。購入して物件を賃貸に出と、契約の際に、持ち主も仲介業者も
違法となります。
市街化調整区域内の農家住宅は、意外にあるものです。

調整区域内での建物の建て替えでご相談頂くことが多いのですが、複雑な内容で
建て替えができない、又は希望する建物は建たないといったケースがあります。

中古住宅の利用方法は、そのまま改修して使う方法と、解体して新たな建物を建てる
方法があります。

a)そのまま改修して使う場合

始めに建物の状態を把握するところから始まります。
既存建物の状態を調査(インスペクション)しないで買ってはいけません。
出来るだけ専門家と一緒に建物を見て、状況を確認する事。
そうしないと改修費がいくらいるのか全く分かりません。
インスペクションを行って、劣化度合いや雨漏り、床下の状態等を調査した後、
耐震診断後、耐震性が不足するのであれば耐震補強を行います。

改修費の概算は、私の事務所では改修費20万/m2程度を見込んで計画します。
(全面リノベーションで耐震補強及び断熱気密工事・制作家具・照明も含む)
また、古い建物や傷みの激しいものほど改修費は高額になります。

中古住宅を購入する場合、もう一つ大切な事があります。
中古住宅と言えば建物のイメージが強いですが、実は土地と建物の複合資産です。
敷地を忘れがちにならないように注意してください。

購入の際は、敷地の境界をはっきりさせてから購入する事をお勧めします。
境界を確定すると、謄本通りの敷地広さが無い場合もありますし、隣地の所有者
から境界の指定を受け、狭くなる場合もあります。

b)建て替えする場合

敷地を購入する際、建物を解体して建て替えする予定の場合、敷地が一旦更地に
なる事から、問題点がはっきりする為、対処しやすい利点はあります。

解体するので既存建物の状態は関係ありません。 ただ、解体の際、隣地に接して
いたり越境している場合があり、その際の修繕費が掛る場合があります。

購入前は必ず境界を確認する事が大切です。
注意点としては、解体費が思いのほか掛かる事も意識しておくと良いでしょう。

また、建て替えの場合は新築扱いですので予定建物の制限は道路の幅員によって、
以前の建物より小さくなる可能性があります。
敷地に接する道路幅員が狭いと・・・以前の建物より

〇容積率が小さくなることで、延床面積が小さくなります。
〇道路斜線の影響で、道路面に近い部分は後退した形状になってしまいます。
〇建ぺい率も法令通り建てると、既存建物より小さい建物になる場合があります。

特に既存建物が敷地いっぱいに建っていた場合は、注意して下さい。
建て替えは、気に入った場所で好きな家を建てたい方へお勧めする方式です。

ただ、ここ近年特に注目すべき点は、解体費ですね。
廃材の処分場不足や分別の必要から、やたら解体費が上がっています。(2022年現在)
解体する建物の規模にもよりますが、以前であれば解体費が、建て替え予算の5%程度
だった頃とは違い、10%程度まで占める事もあるので注意しておいて下さい。
総予算の1割が除却だけに使われるのは、建築費に確実に影響しますから。

親族が所有する不動産に住む

最近、若い方でこのような相談を基に、古い建物を改修して住むというケースが
多くあります。 建物の長期利用という面においてお勧めできます。
親族の所有する家は、若い夫婦の金銭的な負担も少なく、既にある建物も比較的
大きな建物である為、空間も十分な広さを持つ住まいであることが多いです。

注意点は、古い建物であることから建物の経年劣化や耐震性についてはしっかりと
した改修工事が必要です。
その為には、既存住宅現況検査(インスペクション)と耐震診断が必要です。
調査結果より、改修(従前の機能や性能の確保)工事と改善(より暮らし易い)工事の
両面からリノベーションを考えましょう。

■ 親族が所有する家を改修して住み継ぐ1

親世帯の近くを選ぶ方は、親子相互で助け合いが普通に出来る関係が必要です。
同居が出来なくても、この様な選択はありだと思います。

特に親にとっては、子供が近くに住んでほしいと願うもの。
その為であればお金も出すというご両親を、今までたくさん見てきました。
ご両親や親族が所有する土地や建物であれば猶更です。

1例ですが、こんなケースがありました。
子世帯が住まいを探すにおいて、現在親世帯が住む家に移り、親世帯が別に所有
する家(これも改修)に移るというパターン。
これから家族が増える子世帯が広い親世帯だった家を引き継ぎ、改修して住む。
そして親世帯は夫婦二人コンパクトな家で充分という事から、提案しました所、
その案が採用されました。
まるでトコロテンみたいな家族の移動です。
子世帯の住まいの改修費も、購入費と比べると格段にお安くできますし、何より
生まれ育った家ですから安心です。

■ 親族が所有する家を改修して住み継ぐ2 

祖父母が暮らしていた家を改修して住むという選択です。
新たに土地を購入する事も無く、既存建物を改修して住むだけなので、改修費
のみで住むことが出来ます。
思い入れある建物であれば、長く使う事は従前に住まれていた祖父母にとっても
とても嬉しい事だと思います。
是非、改修して長く使って欲しいと思います。

古い家であれば、今では手に入れることが出来ないような素材が使われていたり
しているもので、こういう改修の設計は設計者であれば垂涎ものです。
きちんと再利用して使うのをお勧めします。

注意点は、相続権が居住する方以外の人に無いかを確認し、他に相続権者がいる
場合はその方の承認(相続の手続き)を済ませてから進める様にしてください。

■ 両親の家を2世帯住宅へ

例えば高齢の両親が住んでいる家を、2世帯住宅へと改修して同居するケース。
例えば実家の家を2世帯住宅へと建て替えするケースです。

新たな住宅の収得や土地の収得が必要ないため、その資金を建物費や改修費へと
回すことが出来るのでとても有利になります。
新たに住宅を一つ手に入れるのは大きな予算が必要です。
親族の所有する住まいを上手く再利用して、長く住み続ける事は、資源とお金の
無駄遣いを少なく出来る有効な手段です。

まとめ

自分達にはどんな住まいが合うのだろうか。

前回は、住まいに求める自分達の要望 を見つけようとしました。
今回は、その要望を解決できる住まいは、どんな住まいだろうか
これを見つける事が目的です。

私がコンサルタントとしてご相談を受ける内容で多いのが、
『土地を買って家を建てるか、中古住宅を買って改修するかで悩んでいます。』
どちらも確かに悩ましいテーマですね。

しかし、自分達の要望を整理し、それが解決できる住宅の形が見つかれば、
探す物件はおのずから決まります。

土地を買って自由に家を建てる。
古民家のような好きな中古住宅を買って、リノベーションして暮らす。
実家の離れを建て替える。
思い入れある祖母の家を暮らし易く改修して住む。
駅近の中古マンションを買って街に暮らす。
老後はマンションを買って気楽に暮らす。
etc

今までは、『こんな暮らしがしたい・・・。』というイメージから、
はっきりとした『こういう家で暮らす。』に変わるのです。

悩んであれこれ探すのではなく、具体的な方向性が決まれば
その物件に集中して探しましょう。

そうすれば物件探しももっとシンプルになるし、見つかり易くなります。

次回は、
では、具体的に物件探しはどうやって探すのか。
についてお話し致します。
ではまた。

浅野勝義/奈の町

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